今年も『山の日』がやってきました。
この祝日を含めてお盆の連休が始まります。
このタイミングで大きな山に挑む方も多いのではないでしょうか。
夏山シーズン真っ只中ですからね。
せっかくの連休なので、日帰りではなく泊まりで山に登りたいな。
台風の進路が気になるけど、連休の前半は何とか大丈夫かな?
台風の進路を気にしながら天候に恵まれそうな山域を探していると、気になるお山がありました。
そのお山は『針ノ木岳』
夏山は暑さとの戦いでもあるので少しでも涼しい中を歩きたい!!
そんな願いを叶えてくれるのが雪渓歩き!!
日本三大雪渓の1つに数えられる針ノ木雪渓を歩いて絶景の針ノ木岳へ!!
ライチョウにも出会えた最高の夏山でした!!
針ノ木岳の基本情報
針ノ木岳(はりのきだけ)は、富山県中新川郡立山町と長野県大町市にまたがる標高2,821mのお山で、日本二百名山と新・花の百名山に数えられています。
扇沢から針ノ木雪渓と針ノ木峠を経て針ノ木岳へと向かう登山道が主要ルート。
また、爺ヶ岳から種池山荘、岩小屋沢岳、新越山荘、鳴沢岳、赤沢岳、スバリ岳を経て針ノ木岳に向かう後立山連峰縦走路も人気のルートとなっています。
登山口へのアクセス方法、駐車場、トイレ
登山口となる扇沢には24時間利用可能な有料駐車場と無料駐車場が設けられています。
有料駐車場は、最上段目と2段目は12時間1,000円で、3段目と4段目は24時間1,000円となっています。
無料駐車場は有料駐車場の4段目よりも下に位置しています。
有料駐車場の最上段目には24時間利用可能なトイレがあります。
扇沢の有料駐車場の最上段です。
前日深夜には満車でした。

JR信濃大町駅から扇沢まで路線バスが運行されていますので、公共交通機関を利用したアクセスも可能です。
また、首都圏の主要駅より高速バスも運行されています。
ルート上の山小屋、トイレ
扇沢から針ノ木峠を経て針ノ木岳の山頂へ至るルート上には2軒の山小屋があります。
- 大沢小屋
- 針ノ木小屋
それぞれの小屋には売店とトイレがあり、軽食や飲料水を購入することができます。
針ノ木岳に行ってきました!!
山のぼりした日
2022年 8月11日(木)~2022年 8月12日(金)
コースタイム
[1日目]
扇沢(08:30)・・・大沢小屋(09:56)・・・針ノ木峠(14:05)・・・針ノ木小屋(14:16)
[2日目]
針ノ木小屋(06:11)・・・針ノ木岳(07:02)・・・針ノ木小屋(08:16)・・・大沢小屋(12:35)・・・扇沢(14:03)
GPSトラッキング
最高点の標高: 2811 m
最低点の標高: 1413 m
総所要時間: 05:43:57
山のぼり開始
大沢小屋まで足慣らし
スタートは扇沢駅。
立山黒部アルペンルートの長野県側の入口となる駅です。
この日も早朝からたくさんの人がアルペンルートを利用すべく訪れていました。


扇沢に建てられている百瀬慎太郎の詠。
大沢小屋や針ノ木小屋の開設に尽力した登山家です。

針ノ木岳へは扇沢駅の脇にある登山口を利用します。
登山届は必須ですよ。
装備を再確認し、忘れ物チェックをして、いざ入山!!


大沢小屋までは樹林帯の中を緩やかに登っていきます。
朝から気温が高く暑いですが、木々が幾分和らげてくれます。

沢もいくつかやり過ごします。
この日は水はありませんでしたが大雨の後は水があると思いますので注意ですね。

車道も何度かやり過ごします。
指導標がしっかりと建てられているので登山道を見失うことはないです。

この指導標から先は本格的な道になります。
大沢小屋を目指して歩いていきましょう!!

指導標のある場所からは針ノ木岳が望めます。正面のピークです。
その中腹の沢には雪渓が見えます。あれが針ノ木雪渓です。

このお花はヒメシャジンかな? いや、ソバナか?
釣鐘の花は見分けが難しいです。

沢を渡ります。
この日は水量が少なかったので問題ありませんでした。

『要体力』と記された指導標。
針ノ木峠までは標高差も約1,200mほどあるので、間違いなく体力が必要なコースです。

大沢小屋に着きました!!
小屋の入口に飾られている手ぬぐいを早速購入。
行程の序盤にも関わらず、積極的にザックを重くしていきます。

小屋の脇には百瀬慎太郎のレリーフがあります。

雪渓に取付く
扇沢から大沢小屋までは約3kmの道のりです。
ここから針ノ木峠までは約4kmなので距離的には行程の半分なのですが、標高差は約1,000mあります。
気を引き締めて歩いていきましょう!!

針ノ木峠までは1本道です。
ピンクテープやペンキも多いので道に迷うことは無いと思いますが、入山する際はかならず地図を持っていきましょう。

ハシゴもありますが10段ほどなので問題ありません。
高度感もありません。

雪渓に向かっては沢の左岸を歩いていくのですが、トラバース気味な道なので注意が必要です。
雨の後は滑りやすいと思います。


針ノ木小屋まで2:30と記されています。
まだまだ先は長いですね。

登山道にはたくさんのお花が咲いていました。
これはシロバナニガナでしょうか。
夏の多年草です。

この花はオオコメツツジですかね。
日本海側に分布する半落葉性のツツジで、北アルプスなど標高の高い場所にある草地に自生しています。

これはクルマユリです。
亜高山帯から高山帯の草地などに自生しています。

鮮やかな黄色のお花はゼンテイカですね。別名はニッコウキスゲ。
別名の方が有名でしょうか。
”ニッコウ”と付きますが栃木県日光市の固有種ではなく、全国的に分布しているお花です。

たくさんのお花を愛でながら歩いていると、沢を右岸に渡る木橋に出合いました。
右上奥に雪渓がチラッと見えてきましたね。


木橋で沢を渡ると、正面に針ノ木雪渓が望めます。
雪渓からの吹きおろしの風が冷たく気持ち良いです。
たくさんの人が雪渓を登っていますね。

青空も見えてきました。
今回の山行で楽しみにしていた雪渓歩きが始まります!!

雪渓のち急登
雪渓には右岸から取付きます。
スノーブリッジができていますが、問題なく歩けそうです。

チェーンスパイクを取り付けて雪渓に入ります。
雪はザラメ状で固いです。

スプーンカットされた階段状の道になっているので思っていたよりも歩きやすいです。
ルートの目印となるリボンの付けられたツリーを目指して登って行きます。

ガスに覆われると数メートル先が見えなくなりますので、ツリーの目印はありがたいですね。

雪渓を抜ける場所は左岸になります。
大きなスノーブリッジができているので、雪渓の端に寄りすぎると危ないですね。

雪渓を登り切ると針ノ木峠までは急登の連続です。
ここからが本番でしょうか。

急登に取付いて、しばらくしてから振り返ると、大きく望めていた雪渓が小さくなっています。
写真では伝わり辛いかもしれませんが、なかなかの急登なんです。。

この黄色いお花はミヤマダイコンソウでしょうか。
亜高山帯から高山帯の岩の隙間や砂礫地に生育する多年草の高山植物です。

登っても登っても、なかなか針ノ木峠が見えてきません。。。
針ノ木雪渓までは序章です。本番は雪渓後にやってきます。


急登に喘いでいると最終水場に出合いました。
写真の左側に水が流れています。念のため浄水してから飲用した方が良さそうです。

いやー、だいぶ登ってきました。
ガスも晴れてきたので強い日差しが降り注いできて、疲労したカラダに堪えます。

針ノ木岳から爺ヶ岳方面を繋ぐ稜線はガスに覆われています。
でも徐々に薄くなってきているので、あと少しできれいな稜線が望めそうです。

展望の針ノ木峠へ
正面奥に見えるのは針ノ木峠か?
いや、違うか・・・。
でも、もうひと踏ん張りで稜線に出れそう。

稜線上のガスが流れていき、スバリ岳が大きく望めました。
夏山らしい風景に見惚れます。

目指す稜線も少しずつ近づいてきています。
足元はザレた急登なので滑らないよう慎重に。

こんな感じの道が続くので谷側に寄りすぎると岩を落とします。
山側を歩いて、下方の登山者に迷惑をかけないようにしましょう。

標高が2,500m近くになっても日差しが強いので暑いですね。。。
盛夏に大きな山を登る際は水の量は多めに。

針ノ木峠直下の九十九折の急登。
その道は永遠に続くのではと思ってしまいますが、必ず終わりが来るので安心してください。
左端に針ノ木峠の指導標が見えてきました!!

ふーっ!!
もう少しで稜線・・・

きたーっ!!
針ノ木峠が目の前に!!
正面の建物は針ノ木小屋ですね。

厳しい道のりを越えて針ノ木峠に着きました!!
標高は2,536mです。

針ノ木峠の東側に蓮華岳がありその先に船窪小屋があります。
反対の西側には針ノ木岳があり、その先に新越山荘と種池山荘があります。
どちらの道もいつかは歩いてみたいです。

針ノ木小屋と針ノ木岳。
針ノ木岳のピークはここからは望めません。ピークっぽく見える峰はニセモノです。

さて、小屋で受付をします。
小屋泊の時、ここから夕食までの時間がサイコーですよね!!

小屋の前からは北アルプスの南部がきれいに望めます。
手前の左に船窪岳、稜線を辿って中央奥に烏帽子岳。
その奥は裏銀座の山々が見え、中央左に槍ヶ岳ですね。

槍ヶ岳をアップで。
南部は雲は多いですが大きな天気の崩れはなさそうです。

左の稜線は蓮華岳からの道で、北葛岳、船窪岳と繋がっています。
中央奥にパノラマ銀座の燕岳、大天井岳が望めます。

小屋でまったりと
小屋でビールを飲みながら、周りの景色を楽しみました。
明日の朝にアタックする針ノ木岳方面です。

こっちは蓮華岳方面。
小屋から1時間で山頂に立てます。余力があれば登りたかったのですが、アルコールチャージをしてしまったので、登頂は次回に持ち越します。

小屋の周りを散策。
針ノ木小屋のテント場です。約30張ほどの幕営が可能です。
この日は60張を越えるテントが張られていました。
最近のテント場って混んでいますよね。。。

針ノ木岳から続く稜線もガスが流れていきましたね。
左からスバリ岳、赤沢岳、鳴沢岳です。

左に鳴沢岳、中央に岩小屋沢岳です。この間のコルに新越山荘があります。
右端には種池山荘、岩小屋沢岳の右奥は鹿島槍ヶ岳、左奥は白馬岳です。
北アルプスの北部はスッキリと晴れていますね。

歩いてきた扇沢はガスにのまれてしまいました。
でも、数十分後には・・・

スッキリと晴れてしまうのです。
夏山らしい、風景の移り変わりを楽しむことができました。

針ノ木岳にアタック!!
おはようございます。今日は2022年8月12日で時間は6:00です。
小屋の前から望む北アルプス南部の山々。
昨日よりも雲が多いですね。このあと天気は崩れそうです。

こちらは北アルプス北部の山々。
雲は多いですが、南部よりも天気は良さそうです。

針ノ木岳に向かって登山開始!!
小屋からは約50分ほどで約300m標高を上げる道となります。

振り返ると、正面に蓮華岳がきれいに望めました。
眼下には針ノ木小屋が見えます。

針ノ木岳のピークは右奥です。
1本道なので迷わず歩けますよ。

黄色いお花はウサギギクです。亜高山帯から高山帯の草原地帯に生育する多年草です。
左側の綿毛はチングルマの実です。チングルマは花が終わると雌しべの付け根にあった子房部分が大きくなって種になり、どんどん長い毛をぐるぐる伸ばし、チングルマの綿毛になります。

別の場所のチングルマは、まだ花をつけていました。

途中、斜面をトラバースしながら山頂へ向かいます。
右のピークが針ノ木岳の山頂です。

重い雲が垂れこめていますが視界は良好ですね。
朝日が山肌を照らしています。まだ天気は持ちそうです。

トラバースしている途中で振り返ると、左奥に爺ヶ岳が望めました。
右の大きなお山は蓮華岳です。

針ノ木岳とスバリ岳のコルの先に剱岳が望めました。
山頂付近は雲の中です。

中央のコルに向けて登って行きます。
山頂が近づいてきました。

この指導標の地点で稜線に出ます。

眼下には高瀬ダムが見えます。
北アルプス南部の天気は、出発時と比べてどんどん悪化している感じですね。

正面に山頂を捉えました。
ガレ場の道で浮石が多いので注意が必要です。

山頂まであと少し!!

針ノ木岳の山頂に到着!!
標高は2,821mです。天気が崩れる前にピークを踏めました。

山頂からの展望を愛でる
山頂の西側に三角点があります。
奥の正面に立山、右に剱岳です。

針ノ木岳は三等三角点です。

三角点からは立山と剱岳が大きく望めます。
眼下には黒部湖も見えます。黒部ダムのある湖です。

針ノ木岳からスバリ岳方面へと続く稜線。
歩き応えのありそうな道ですね。いつかは歩いてみたいです。

正面の平な場所は五色ヶ原ですね。
いつかは五色ヶ原でテント泊してみたいものです。

山頂は広いですね。
ここで長い時間を過ごす人は少ないと思いますが、景色を楽しみながらごはんを食べられます。

剱岳にかかっていたガスが晴れて山頂を望むことができました。
今頃、たくさんの人で賑わっているのでしょうか。

針ノ木岳から望む蓮華岳の山容はカッコイイですね。

南側から雨のカーテンが近づいてきたので小屋に向けて下山します。

北アルプスのアイドルを愛でる
山頂を後にして小屋に向けて下山します。
この紫のお花はクガイソウでしょうか。

下山時も浮石に注意です。
景色に見惚れいていると転倒しますよ。

黄色いお花はウサギギク、白いお花はミヤマダイモンジソウでしょうか。
亜高山帯に咲く多年草です。

ミヤマダイコンソウとミヤマダイモンジソウです。
似たような名前で混乱しますね。

まだ雨や来なそうですね。
小屋に戻るまで天気が持ってほしいです。

先行者から「ライチョウいますよ!」とお声がけいただきました。
岩場に佇むライチョウを見ることができました。
いつ見ても感動しますね。

稜線を見つめるライチョウ。
「あの稜線に引っ越そうかしら」と、考えているのでしょうか。

遠くをじーっと見つめています。

親鳥の傍には子が3羽いました。
草原の中を歩き回っていましたよ。



子には目もくれず、相変わらずじーっと遠くを眺めています。
ライチョウも景色を楽しんでいるのでしょうか。

歩き回りながら、徐々に親の元に近づいています。
そろそろお遊びの時間も終わりのようです。


テント場まで戻ってきました。
小屋からはかなり登った位置に張られていたので、場所取り合戦が熾烈だったのだと想像できます。

北アルプス北部は視界良好、しばらくは天気の崩れはなさそうです。

針ノ木小屋に戻ってきました。山頂の往復で約90分ほどでした。
小休止してから扇沢へ下山します。

悪天になる前に
台風の影響で天気が崩れそうなので扇沢へと下山します。
この稜線の眺めともお別れなので、最後に目に焼きつけておきます。

針ノ木峠直下は急なザレ道なので、下山時は転倒や落石に注意です。


ガスに覆われてしまいました。
登山道が確認しずらくなりますが、ピンクテープやペンキは多く設置されているのでそれを辿って歩いていきます。

稜線にもガスが迫っています。
ゆっくりと確実に覆っていく感じです。こういう光景って見惚れますね。

雪渓の取付きまで下りてきました。
スノーブリッジが大きく口を開けています。
昨日はガスガスの中の雪渓歩きでしたが、今日は今のところガスは薄いですね。

チェーンスパイクを装着して雪渓を下りていきます。
さっきまでのガスが晴れて稜線や爺ヶ岳も見えてきました。

雪渓の上はとても涼しいので、風が強い時は寒さを感じるかもしれません。
寒さを感じやすい人は1枚羽織っても良いかもしれません。

だいぶ下ってきました。
ツリーに従って沢の右岸へと歩いていきます。

雪渓を下りて右岸に着きました。
ここでチェーンスパイクを外して、沢沿いを歩いていきます。
この辺りはガレ道が続くので浮石に注意です。

この木橋を渡って左岸へ。
この橋が無いと渡渉に苦労しそうな沢なので、とてもありがたいです。

左岸の道は沢に向かって落ちているので注意が必要です。
クサリやロープが設置されているので補助的に使いながら通過していきます。


大沢小屋まで20分の地点まで下りてきました。
この指導標から先は樹林帯の中を歩いていきます。少し気持ちが楽になりますね。

景色は乏しいですが、歩きやすい道になるので良しとします。

この葉だけ色づいていました。
緑の中にあった赤色なのでとても目立ちました。徐々に秋が近づいてきていますね。

ほどなくして大沢小屋に到着です。
ここで小休止してから扇沢に向かいます。

大沢小屋から扇沢の間も樹林帯の道です。
途中に苔むした沢がありました。癒されますね。

沢を何度かやり過ごしながら進んでいきます。
雨は徐々に強くなってきましたが、樹林帯の中だとカッパはいらないです。

車道に出合いました。
ここまで下りてくると扇沢まではあと20分ほどでしょうか。

車道→登山道→車道→登山道、といった具合に歩いていきます。
ずーっと車道を歩いても扇沢へ下れますが、九十九折りなので距離は長いですよ。

扇沢の登山口まで戻ってきました!!
長い道でしたが楽しく歩けました。

天気はイマイチな日でしたが、アルペンルートを利用する人で扇沢駅は混雑していました。

針ノ木岳を歩いてみて
このルートのハイライトは何と言っても雪渓歩きです。
急登で大変ですが、雪渓の上は想像以上に涼しくて快適に歩けました。
しかし、雪の状態如何では8月中旬以降は雪渓の上を歩くことはできなくなる可能性があるので、針ノ木峠に向かう際は事前に雪渓の状態を確認した方が良いです。
扇沢から針ノ木峠まで『樹林帯→雪渓→急登』という感じで歩いていきますが、最後の急登は手強かったですね。久しぶりに堪えました。
歩行時間が長いので水の量は多めに持って行った方が良いです。
途中に水場はありますが枯れている可能性もあるので。
次は稜線を歩いて周回したいですね。
種池からの逆回りもアリかな。